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2026.05.31(日)
映画『ホールディング・リアット』トークイベントレポート
5月31日(日)に開催しました映画『ホールディング・リアット』トークイベントのレポートです! 当日は本作品の配給会社であるユナイテッドピープル株式会社 代表取締役の関根健次さんにご登壇いただきました。
今回は、その舞台挨拶のレポートをお届けします。
映画配給を通じた「平和を作る」ことへの思い
シアターエンヤではおなじみの関根さん。これまで、関根さんが代表を務める配給会社であるユナイテッドピープルの「異なる世界、異なる人々をつなぎながら、みんなの力で一緒に平和を作る」という思いから、ガザに関する4本のドキュメンタリーを中心に配給をされてきました。
長年にわたり、パレスチナ問題を見つめ、過去幾度となくパレスチナやイスラエルを訪問してきた関根さん。近年、ガザ地区の学校の9割が破壊され、水や食料といった基本的人権すら奪われている現状に対し、強い問題意識を抱き続けてきました。
一方で、2023年10月7日のハマスによる攻撃以降、関根さんは「パレスチナ側の痛みには長年共感してきたが、果たしてイスラエル側の気持ちに立ったことはあっただろうか」と自問したと言います。そこで、事態を多面的に理解したいと、関根さんは2024年3月に本作の舞台となったキブツ・ニールオズを訪問しました。現場の惨状を目の当たりにし、どこに暮らしていても家族を思う気持ちは同じであるという人間の共通性を強く再認識したと振り返ります。そして、それが今回の映画の配給に繋がったという事をお話してくださいました。
人間のぬくもりを伝える意義
関根さんの根底には、映画を通じて、その土地にどんな人が住み、どんな思いを抱えているのかというヒューマニティ(人のぬくもりや人間性)を伝えたいという思いがあるそうです。
本作の中心人物であるリアットは、ホロコーストを研究する歴史教師です。彼女は夫を殺害され、自身も人質としてガザに連れ去られたにもかかわらず、解放後にニューヨーク・タイムズへの寄稿で、自身の夫が殺されたことや人質になったことを理由に戦争を継続してほしくないと訴えました。さらに、報復は求めず、自分の子どもたちとガザの子どもたちが平和な未来を生きられることを願うというメッセージを発信しています。
関根さんはこの言葉に触れ、絶望的な状況下でも負の連鎖を断ち切ろうとする人間性に希望を見出していると語りました。
機能不全に陥る国際社会とジャーナリズムの役割
参加者から「国連や国際社会が機能不全に陥っているのではないか」という指摘が上がると、関根さんは、国連事務総長自身が「法の支配からジャングルの掟が支配する世界に突入した」と警鐘を鳴らす現状において、暴力を食い止めるための国際法が十分に機能していない現実を指摘しました。
一方で、この状況を打開するアプローチとして、関根さんは大きく3つのポイントを話されました。まず1つ目は、報復の連鎖を止める意識を広げるという個人レベルの共感の拡大、2つ目は、国際社会が法に基づき責任ある行動をとる国際法の機能回復、そして3つ目が、現場の真実を外部に伝えるジャーナリズムの徹底です。
特にジャーナリズムの重要性について、過去のオバマ大統領がイランでの米軍の民間人の殺戮をWikipediaにリークされたことから、米軍撤退の撤退までにつながった事例を挙げつつ、現在、ガザ地区へ海外ジャーナリストの立ち入りが禁止され、ジャーナリズムが機能できない状況に強い危機感を感じておられました。
絶望的な現状の中に見出す、希望の種
別の参加者から「パレスチナ国家が消滅しかねない過酷な現実の中で、本当に希望はあるのか」という切実な問いが投げかけられました。関根さんは、すでにイスラエルがパレスチナへ入植し、地名も書き換えられていることや、イスラエルの幹部がテロリストとして国際指名手配をされている危険人物であり、レバノンなどへの戦線拡大といった極めて危険な現状が進んでいることへの危機感を率直に答えられました。
ただ、力あるものが正義をねじ伏せていく政治が状態化している中でも、わずかな希望も残されている想いを話されました。例えば、リアットの教え子であるイスラエルの高校生たちが以前、福島を訪問していたエピソードが紹介されました。高校生たちは、原発事故を経験した福島の人々が、東京電力と対立ではなく対話を通じて未来に向かって歩む姿に感銘を受け、イスラエルに戻ったらパレスチナとの架け橋になりたいと語ってくれたそうです。
イベントの最後には、本作のプロデューサー、ランス・クレーマー氏が偶然にも日本に旅行のため来日されたタイミングだったことから、私達に下記のようなメッセージが届きました。
『シアターエンヤのみなさんへ、上映をして下さって本当にありがとうございます。本作を通して、平和への思いとヒューマニティを感じていただければ嬉しいです』
メッセージが代読されると、会場は温かい拍手に包まれました。
上映は6/4まで続きます。まだご覧になっていない方は、ぜひ劇場で、イスラエルの今と、そこで生きる人々の現実を見つめてください。
上映スケジュールはコチラ
現在、当館では【特集上映】「いま、イスラエルで何が起きているのか ―権力と分断の記録―」を行っております。映画を通して、世界で起きている現実とその背景を知るきっかけになることを願っています。
関根健次さん、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
