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2023.03.04(土)

イベント

『コペンハーゲンに山を』アフタートークショーレポート!!

平素よりシアター・エンヤをご愛顧いただき誠にありがとうございます。

3月4日(土)に実施しました『コペンハーゲンに山を』アフタートークショーのレポートです!
神保慶政さん(映画監督/福岡建築ファウンデーション活動会員)
松岡恭子さん(建築家/福岡建築ファウンデーション理事長)
青木仁敬さん(建築家/福岡建築ファウンデーション理事)
甲斐田晴子さん(いきいき唐津株式会社専務取締役/シアターエンヤ館長)にご登壇いただきました。

▼作品紹介『コペンハーゲンに山を』
2011 年、デンマークの⾸都コペンハーゲンにある⽼朽化したゴミ処理施設建て替えのコンペ結果発表会が⾏われた。満場⼀致で優勝者を発表する際、アマー・リソース・センターCEO のウラ・レトガーは歌い出すほど興奮していた。⽩⽻の⽮が⽴ったのは、デンマークのスター建築家ビャルケ・インゲルス率いるBIG 建築事務所。彼らのアイデアは⾶び抜けて奇抜で、巨⼤なゴミ焼却発電所の屋根にスキー場を併設し、コペンハーゲンに新たなランドマーク『コペンヒル』を作るというものだった。しかし、カメラは完成までの過程で、苦難の連続を追うことになる。ゴミ焼却発電所とスキー場はどう建造物として共存出来るのか?予算内に完成出来るのか?次々と疑問や課題が⼭積みになっていく──。
作品WEBサイト:https://unitedpeople.jp/copenhill/

今回は映画『コペンハーゲンに山を』を皆で観て、建築家の目線、九州・唐津の目線でどう感じたかをトークする企画です。


映画監督の神保さん。『コペンハーゲンに山を』の劇場公開にあたり、映像の調整をご担当されました。
神保さんは、「何年にも渡る企画をこれだけコンパクトに編集した点がすごい。タイムラプス・早回しにはユーモアがあるし、音楽も計算されていて面白い」と映画監督目線で感想を述べられました。


建築家の青木さん。「ビャルケ・インゲルスのホームページでこのプロジェクトは見ていて、注目していた。この時点の映像があるということは、映画が世界で上映され、コペンハーゲンの取り組みに世界から注目が集まるところまで含めての壮大なプロジェクトではないか」と考察。
「何年も前から知っているプロジェクトの映画を、コペンハーゲンから遠く離れた日本で観る。まさしく映画的な体験だった」と語ってくれました。


建築家/福岡建築ファウンデーション(FAF)理事長の松岡さん。「建築することの『楽観性』と『痛み・苦しみ』がこの映画に詰まっていて、疑似体験させられた。」と建築家目線で語られました。

松岡さんは、コペンハーゲンでビャルケの他のプロジェクトをご覧になっています。ビャルケについては「彼がデザインした施設や公園が市民にとても受け入れられている。わかりやすい、そして体験型の建築・デザインが人気の秘訣である」と話されました。

コペンハーゲンという街については「数十年前までは住みにくい・休日は郊外に出たくなるような街だった。そこから地道にアーバンデザインを仕掛けていって、徐々に暮らしやすい街になっていった。そこにビャルケが登場して、もっと体験型の空間を提示した」と、映画の背景を語ってくれました。


シアターエンヤの館長・甲斐田はまちづくり会社・いきいき唐津㈱の取締役でもあります。「建築デザインとテクノロジーと自然。これを融和させてサステナビリティな社会を実現していくことへの真剣度・情熱を感じた」と述べ「環境問題のコペンハーゲンと少子高齢化問題の唐津。問題の違いはあるが、同じ『持続可能な社会』を目指すということで通ずる部分がある」と語りました。

ビャルケ・インゲルスとはどのような建築家なのか。
青木さんは「ビャルケに対する大きな印象は『スーパー・プレゼンテーション』。映画内ではかなり抑えているが、本来は色々な武器を持っていて面白い。世界中の建築家のプレゼンのスタンダードを変えてしまった。建築に関するプロセスがすべて楽しく見える、時代が渇望したスターであると思う」と話されました。

松岡さんは「コペンハーゲンでビャルケ・インゲルス・グループはある種の映画スターやミュージシャンのような受け入れられ方をしている。文化芸術の伝統は一旦置いといて、人々が豊かに健康的に暮らすことに重点を置かれた空間デザインがコペンハーゲンにヒットしたのだと思う。」
「デンマークは建築やデザイン系の仕事でない人たちも普段からデザインを語っている。デザインに対するリテラシーが高いのだと思う。そこに、世界に打って出るスーパースター=ビャルケ・インゲルス・グループが生まれてきたことに、皆心を寄せている」と分析されていました。

『コペンハーゲンに山を』の原題は「Making a mountain」=”山をつくる”。比喩的な表現で、いくつかの意味に取ることができるタイトルです。
神保さんは唐津の”山”として、唐津城にシンボルとしての”山”、KARAEに文化中心地としての”山”を感じたそうです。
まちづくりにおいて”山=有機的な場所をつくること”について甲斐田館長へ質問がありました。
甲斐田館長は「唐津城とKARAEは全く異なる作られ方をしている。マーケティングで《作りたいもの、作れるものをつくる》=『プロダクトアウト』、《市場調査でニーズに応えるものをつくる》=『マーケットイン』、《社会における課題解決のためにつくる》=『アウトサイドイン』という考え方がある。唐津城は、もともと天守閣がないのに作られた『プロダクトアウト』で結果的に愛されるシンボルになった。KARAEは『アウトサイドイン』。人口減少という課題の中でどんな機能が必要か調査して作られた施設である」と説明されました。

コペンヒルとKARAEの共通点については「市民が楽しめる場所を作る”快楽主義”という点が共通すると思う。地域に人たちに愛されてこそ、持続可能につながる。KARAEのフィロソフィーとして『近き者説び遠き者来たる』があって、”そこに暮らす人が目で楽しみ、誇りに思い、楽しそうに暮らしていれば、自ずと観光客や移住者がやってくる”という考えは、コペンヒルの哲学に通ずるものがある」と語られました。

最後に福岡の建築について「山を作るということについては、『アクロス福岡』という建物があって、あれも実は山がコンセプトなのです。見慣れてますが、よく考えたらとんでもない建築です」と、身近にも面白い建築があることを教えていただきました。
福岡建築ファウンデーション(FAF)は、市民の方に福岡の建築を楽しんでもらう企画を行うNPO法人です。ご興味がございましたら是非アクセスしてください。
福岡建築ファウンデーションWEBサイト:https://www.fafnpo.jp/

『コペンハーゲンに山を』は3/9(木)までの上映です。
神保慶政さん・松岡恭子さん・青木仁敬さん・甲斐田館長、そしてご来場のお客様、ご参加いただき誠にありがとうございました。

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