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2024.11.17(日)

イベント

『顔さんの仕事』舞台挨拶レポート!

平素よりシアター・エンヤをご愛顧いただき誠にありがとうございます。
11月17日(日)に開催しましたドキュメンタリー映画『顔さんの仕事』舞台挨拶のレポートです。
当日は、今関あきよし監督にご登壇いただきました。

▼『顔さんの仕事』作品紹介
現在の台南市下営区に生まれ、幼い頃から絵を描くのが好きだった顔振発(イェン・ジェンファ)。絵に対する才能を感じた家族は、看板職人の陳峰永の弟子に送り出した。1970年代は台湾映画界が盛り上がり、顔は1ヶ月に100から200枚もの手描き映画看板を描き、台南の映画館「全美戯院」の看板を制作から設置まで一手に引き受けた。だが生涯にわたる制作は、視力に大きな負担をかけ、医師が何年も前に、彼の網膜がひどく傷ついていることに気付き、右目はほぼ見えない状態に。それでも、顔振発は今も描き続けている。
台湾国宝級絵師である顔振発。映画館の手書きの大型看板から、ファッションブランド「グッチ」の巨大アートウォール、英国のロックバンド「コールドプレイ」の宣伝壁画まで、台湾で映画館の前に飾る絵看板を50年以上描き続け、本年の台北映画祭(台北電影節 / TaipeiFilm Festival)で貢献賞を受賞した、顔振発のドキュメンタリー。

日本でも台湾でも、顔さんのように手描きで映画看板を制作する人が少なくなっている現在、本作を製作したきっけかについて今関監督は、「以前の日本では一つのまちに映画館が5,6館あれば手描きの看板絵師が(5,6館につき)2,3人はいましたが、シネコンが多くなり、映画看板を置く場所が無くなったことで担い手が少なくなり、現在の日本では看板絵師は秋田御成座の看板を描いている方と大阪にいる方のお2人です。台湾でも顔さん含め2,3人ですが、映画の看板を毎日描いているのは顔さんだけです。本作を製作する際には皆さんにお会いし様々なお話を伺いました。僕の世代では手描き看板になじみがありましたので、それを残しておきたい気持ちがあったのと、台湾が大好きで30回以上行っていることも本作を製作したことに影響しています。本作の前に『恋恋豆花』という劇映画を台湾で撮影しましたが、その時から顔さんのことは知っていてお会いしたいと思っていました。ある日、顔さんのいらっしゃる台南に会いに行き、映画館「全美戯院」の方ともお会いしました。当時は映画にしようと思わず、お会いできてよかったな、という感じでしたが、せっかくならもっとお話を聞きたい、絵の描き始めから終わりまで、そしてその看板を掲げるまでを観てみたいと思い、それならば撮ろう!と思いました。」と語られ、顔さんの姿を記録として残すことの意味を感じました。

顔さんは、1枚の看板を2,3日で完成させます。手描き看板の制作スピードの速さと手法に驚いた話になると、「正確に書いても意味が無いので、遠くから見たときの印象やいかに目に付くかが大事です。」と話されました。日本でも台湾でも映画の上映サイクルが早いので看板を描くのが大変ではと監督から顔さんに聞いたところ、「映画の全盛期では、映画館5,6館を掛け持ちしており、1ヶ月で100~150枚描き徹夜することもあったので今がはるかに楽。」と顔さんは仰ったようです。
また、顔さんが看板を描いている映画館「全美戯院」で世界で一番最初に本作を上映された際、顔さんはご自身が写っているポスターを見ながら看板を描いたエピソードも披露されました。その手描きの看板はパンフレットの表紙にもなっていますので、是非映画館でご覧ください。

顔さんは本年の台北映画祭(台北電影節 / TaipeiFilm Festival)で貢献賞を受賞されています。「普通映画の賞は監督、キャストなどエンドロールに書かれている人しか取れません。顔さんは18歳から50年間映画看板を描かれているにも関わらず映画の賞を一度も受賞したことがありません。ただ、顔さんは地元の方にも人気があり、これだけ台湾映画界へ貢献されていることもあり、台湾にある2大映画祭の一つである台北映画祭で貢献賞を受賞されました。」「台北映画祭は台湾全土で生中継され、いつもラフな服装の顔さんがフォーマルな装いをされていてとてもかっこよかったです。授賞式で台湾の大女優が受賞者へトロフィーを渡していましたが、顔さんの時は深々とお辞儀をされていました。その女優さんはデビュー作から顔さんに看板を描いていただいており、敬意を示されたと思います。また、多くの映画人が顔さんを知っていて、ハリウッドの有名俳優も会いに来たことがあるようです。」といかに顔さんが台湾のみならず、世界の映画人に敬愛されているかを感じました。

また、劇中では顔さんの先祖の話も登場し、そのすごいルーツに一同驚きました。ちなみに、顔さんがご自身のルーツを知ったのは1年前とのことで、監督も事前に調べずに撮影当日に知ったとのことでとても驚かれたとのことです。どんなルーツかは、是非スクリーンでお確かめください。

実は、顔さんは右目があまり視えません。「長年描いているせいか、ほぼ右目が視えずほぼ片目で視ているようですが、視える限りは描き続けたい、天職だと仰っています。ただ、映画館が無くなると仕事がなくなるので心配です。」と顔さんを慮っていらっしゃいました。

映画館でもフィルムからデジタル素材への移行に伴い映写技師という職業が少なくなっています。映画のポスターもデジタル化していく中で、手描き看板の魅力を監督にお尋ねすると、「写真を大きくした方が正確ですが、手描きの看板は遠くから見ても分かるように制作しています。正確性ではなく、強調する部分を考えながらオリジナルで描くことに味があり魅力だと思います。」と語られました。

顔さんに密着したドキュメンタリーを制作したのは今回が世界初です。「台湾ではテレビで10分程度紹介された程度です。日本人が台湾の顔さんを撮るということで注目され、映画館でも上映されました。また、台湾の国営放送で2025年1月1日から本作が2年間放映されます。中国語字幕が付きますので台湾のいろんな方に観ていただけると思います。」という嬉しいニュースも飛び出しました。

今関監督は花筐/HANAGATAMIの監督である大林宣彦監督とも縁のある方で、『顔さんの仕事』のカメラマンである三本木久城さんは『花筐/HANAGATAMI』ではカメラマンと編集を担当されたとのことです。『花筐/HANAGATAMI』についても「撮れたことに感動しました。とても面白く、パッションの塊の映画でした。」と大絶賛でした。シアター・エンヤのホワイエには、『花筐/HANAGATAMI』の小道具の一つに手描き看板がありますので、是非ご覧ください。

お客様との質疑応答では、「(劇中に出てきた)顔さんが絵を教えていた人たちは継がないの?」という問いには「あの方たちは顔さんの絵画教室の生徒さん達で弟子ではないので、顔さんの後を継ぐ人はいません。」といった後継者についてのお話や、「台湾と日本での絵師の制作手法に違いはありますか?」との問いには「国の差というより環境によって変わります。顔さんは路上で油彩で描いていますが、日本だと路上で描くのは難しいので室内が多くなりますが、室内だと油彩だとシンナーがこもりますので水彩が多くなります。また、日本では顔さんのように大きな看板は無く、横長が多いので違うデザインを描き、顔さんの手法とは随分違いますね。」とのことです。また、「小中学校の同級生のお父さんが看板描きだったのを思い出しながら映画を観ました。」という感想もありました。
「今関監督にとって大林宣彦監督とは?」との質問には「重い質問ですね(笑)。デビュー作からの縁で、結婚式の仲人もしていただきました。色んな意味で師匠で、僕にとっては全てが教科書でバイブルです。」と答えられました。

顔さんの仕事』は、11月21日(木)まで上映しています。
スケジュールはコチラ
顔さんという存在、そして映画看板という職業を知らない方も多く、本作のようなドキュメンタリー映画を多くの方、特に若い方々に観ていただけると嬉しいです。
今関あきよし監督、ご来場のお客様、ご参加いただき誠にありがとうございました。


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