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2024.09.30(月)

イベント

『99%、いつも曇り』舞台挨拶レポート!!

平素よりシアター・エンヤをご愛顧いただき誠にありがとうございます。
9月29日(日)に実施しました『99%、いつも曇り』舞台挨拶のレポートです。
当日は、監督・脚本・主演を務められた瑚海みどり監督とご出演の曽我部洋士さんご登壇いただきました。

▼『99%、いつも曇り』作品紹介
母親の一周忌で叔父に言われた「子供はもう作らないのか」の一言に大きく揺れる楠木一葉(45)。生理も来なくなって子供は作れないと言い放つ一葉の目には、夫の大地(50)が子供を欲しがっている姿が映る。流産した経験もあり子作りに前向きになれない一葉だったが、自分がアスペルガー傾向(発達障害グレーゾーン)にあることに悩みを持っていた。養子を取ることを薦められるが、次第にズレていく一葉と大地。

『99%、いつも曇り』は瑚海監督の長編初作品であり、「第17回 田辺・弁慶映画祭」のコンペティション部門で【グランプリ】【観客賞】【俳優賞(瑚海みどり、二階堂智)】【わいず倶楽部賞】の4部門で5冠受賞。他にも「第36回東京国際映画祭 Nippon Cinema Now部門」に正式出品、「あいち国際女性映画祭2024」の国内招待作品に選出された秀作です。

瑚海監督と司会を務めたシアター・エンヤ館長の甲斐田との間で交わされた「おかえりなさい!」「ただいま!戻ってこれて嬉しいです!」という挨拶からスタートした舞台挨拶。実は、瑚海監督のデビュー作の短編映画『ヴィスコンティに会いたくて』(2021年)は、当館が企画・運営する映画祭第1回演屋祭(昨年から唐津演屋祭と変更)で金賞を受賞!今回は満を持しての凱旋上映となり、当館での上映を記念して約3年ぶりに唐津までお越しくださいました。

今回は『99%、いつも曇り』を上映後、「第1演屋祭」で金賞を受賞した『ヴィスコンティに会いたくて』も特別に上映し、その後ゲストのお2人からお話をお聞きしました。
唐津演屋祭」は、コロナ禍でクリエイターの皆さんの発表の場が無くなったことを受けて、その場所を提供するお手伝いを目的に開催した映画祭ですが、『ヴィスコンティに会いたくて』始め多くの素晴らしい作品に出会えたことで私達スタッフが励まされ、そして映画祭を続ける勇気にも繋がりました。その金賞受賞者の方が数年後に長編映画を製作し凱旋上映してくださることは、私達にとっても感慨深いものがあります。

短編映画『ヴィスコンティに会いたくて』のラストシーンと瑚海監督の現在が繋がっているような気がするとの話では、「そのまま地で言っている感じですね(笑)」と語る瑚海監督。「短編から長編を製作するまでの期間は約3年でした。46歳で思い立って映画美学校へ入学し、『ヴィスコンティに会いたくて』は前期の授業で製作しました。ただ、コロナ禍でしたのでオンラインでの授業ばかりで同期にもほとんど会えませんでしたので、(同期には)少しだけ手伝ってもらい、主に役者仲間がサポートしてくれました。」と当時を振り返りました。

長年声優と役者の仕事されていた瑚海監督。役者メインで仕事をしたい、と考えていたが、声優の事務所に在籍していたためなかなかチャンスに恵まず、一度辞められたことがあります。再び挑戦されたきっかけを、「役者をやりたいのに20代の時にお笑いを進められたり、レポーターをしたりと方向性が見いだせず、モヤモヤした状態で一度辞めましたが、自分の中でずっとマグマのように噴火するのを待っている状態でした。そんなある日、頭蓋骨骨折という大怪我を負いました。その事故を機に、このまま終わるのは嫌だ!このままでは死ねない!と思い、その時自分の中のマグマが噴火しました。」と熱く語られました。その事故をきっかけに映画製作を基礎から学ぶため映画美学校へ入学され、2本目の短編『橋の下で』が第34回東京国際映画祭×Amazon Prime 審査員特別賞を受賞され、「勢いのあるうちに長編を撮ろう!」と長編映画へ挑戦されました。

瑚海監督の映画には、マイノリティの方、弱い方に寄り添う気持ちが伝わるとの質問には、「『99%、いつも曇り』を製作するにあたり、身近なところから題材を選ぼう、そして自分がプロデュースするので好きなものを作ろう、と思いました。また、自主映画なので想いが強くないとお客様へも伝わらないとも意識しました。」「15,6年前にある方から(瑚海監督は)アスペルガーだと思うよ、と言われたことがあります。それ以降アスペルガーについて調べ、その方々の生きづらさや(アスペルガーではなくても)悩んでいる方が多いことを知り、特別な事じゃない、自分の特質を認識し、お互いに得意なものをやっていけばいいのではないか、という思いが本作を製作するきっかけになりました。」と話されました。
また、『99%、いつも曇り』というタイトルについては、「人間はいつも曇っていると思います。家族とのいざこざや、にこやかな顔の裏には悩んでいる顔など。だけど、1%の晴れのために、笑顔のために私達は生きているのだろう、という想いがあり『99%、いつも曇り』をいうタイトルをつけました。」とタイトルへの想いを語られました。

本作には主人公が発達障害傾向のある女性を描いていますが、様々なマイノリティの方が登場しています。瑚海監督は「何かしら抱えている方、悩んでいる方がいるのは当然。本作は悩んでいる当事者の皆さんへエールを贈るつもりで作りました。」と話されました。

また、瑚海監督から「本作は、コミュニケーションが大事だと描いています。夫婦でも言葉にしないと伝わらない、テレパシーで伝わることはないと思います。話すことで傷付くこともあるかもしれませんが、諦めずに何度も言葉を交わすことが大事だと思います。実は、主人公の夫は別れた旦那さんをモデルにしています(笑)」というビックリ発言もでました!


瑚海監督とは短編『橋の下で』でに次いで2作目の出演となる曽我部さん。「『ヴィスコンティに会いたくて』の撮影中に別の作品で共演し、意気投合したのを機に2作目『橋の下で』に出演させていただきました。」と話されました。

出演した感想を聞かれた曽我部さんは、「リハーサルを何度も重ね、慎重に撮った印象です。監督は役者を信頼しているけど、細かく指示されました。瑚海監督の作品に出演するのは2作目なので、築いてきた関係性を活かしていこうと思いました。僕自身も、この1,2年生きづらさを感じることがあったので、『99%、いつも曇り』を観る度に勇気を貰える、1%の(晴れ)ために生きているんだな、いい映画に出演できてよかったなと思います。」と述べられました。

「第17回 田辺・弁慶映画祭」で5冠受賞していることに話が及ぶと、「まず嬉しかったのは観客賞を受賞したことです。観た方が直に選んでくださったことが嬉しくて泣きすぎました(笑)。」と語る瑚海監督。昨年、東京で上映した時も口コミで広がり、共感する方が多かったことが嬉しかったとのことです。

お客様からは「あまり期待していなかったが、観ていくうちに共感する部分も多く観て良かったと思った。べた褒めです。」「20代半ば娘が東京で観て、愛の溢れる物語で良かった、と聞き、佐賀で上映することを知り観に来ました」といった感想が聞けました。

最後にお2人からメッセージを頂きました。
瑚海監督「1年近く『99%、いつも曇り』のツアーを回ってきて、ここ唐津で一旦終了予定となります。是非、面白いと思った方は宣伝してください!励みになります!次回作は全く違うことを考えていて、生きることの難しさを描こうと思っています。三つ子の魂百までというように、子どもの頃に味わったものはずっと残り続けると思いますので、姉妹の話を描こうかなと、更に暗いものをと思っています。」
曽我部さん「いい作品に出演できたと思っています。役者の醍醐味は一人でも多くの方に観ていただくことですので、是非お友達へ広めていただけると嬉しいです。」

再会できたことの嬉しさと感じつつ、40代後半で新たなことへ挑戦された瑚海監督から勇気をもらった1日でした。

『99%、いつも曇り』は、10月3日(木)まで上映しています。
スケジュールはコチラ
瑚海みどり監督、曽我部洋士さん、ご来場のお客様、ご参加いただき誠にありがとうございました。

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