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2023.12.11(月)

イベント

『あの子の夢を水に流して』舞台挨拶レポート!!

平素よりシアター・エンヤをご愛顧いただき誠にありがとうございます。

12月10日(日)に実施しました『あの子の夢を水に流して』舞台挨拶のレポートです!遠山昇司監督、出演の玉置玲央さん・山崎皓司さん・加藤笑平さん、音楽担当の志娥慶香さんにご登壇いただきました。

▼『あの子の夢を水に流して』作品紹介
生後間もない息子を亡くした瑞波は、失意のなか、10年ぶりに故郷である熊本・八代に帰省する。瑞波は幼なじみの恵介と良太に久しぶりに再会し、3人で豪雨災害による傷跡が残る球磨川を巡り始める。川を前にして語られる、それぞれが「あのとき」見たもの。3人はそこで、不思議な現象を目の当たりにする。

『あの子の夢を水に流して』は、令和2年7月豪雨(熊本豪雨)を受けて制作されました。今作を制作するきっかけを遠山監督にお聞きました。
「熊本豪雨のときには東京にいて、故郷の熊本・八代の知り合いから連絡がバンバン入ってきた。球磨川が激変した姿をテレビで観て、それがずっと頭に残っている。それから半年後に、この映画とは別件で熊本に帰りました。するとコロナ禍もあって、あまり復興が進んでいないように感じた。景色が一変してしまった球磨川沿いを歩いて巡っているときに、この映画のストーリーが浮かんできた」と振り返りました。

「映画はアーカイブという要素もある。”あの時はこういう傷痕が残っていたんだ”という記録を残す意味も込めて、6年ぶりに長編映画を撮った」と制作のいきさつをお話しいただきました。

キャストの皆さまに、映画に出演されてのご感想や、印象に残っているエピソードをお聞きしました。

恵介役の玉置玲央さんは球磨川を実際に見て、「これだけ静かな川が氾濫するなんて想像できなかった。一方で災害ゴミが集められている公園がまだあったりする。川の表の姿と裏の姿を見ているようで、現実だけど非現実的な、不思議な気持ちになった」と振り返りました。また台本を見て「70分とは思えない台本の薄さ、セリフの少なさに驚いたが、風景描写・心理描写・川を眺めるシーンなどセリフがないところは現場で球磨川と向き合って、自然と気持ちが乗って行けた」と話されました。

良太役の山崎皓司さんは「災害のニュースはその時は気にしていても、すぐ忘れてしまう。自分でも考える機会をいただいて、こうして形に残る映画に出れて、大変光栄。キャスティングでも、内田慈さんと玉置玲央さんという、同世代で昔から演劇界にいてお互い知っているけど交わらなかった2人と今回共演できて、ありがたかった」とお話しいただきました。

偉一郎役の加藤笑平さん。遠山監督と以前からお知り合いで「熊本豪雨の時にボランティア活動を経験した。そういうリアルな存在感が求められていると思って演技した」と振り返りました。
昔から知っている球磨川については「球磨川はエメラルドグリーンのような、深い青緑のような、ほかの川にはない色が魅力的。豪雨で周りの景色は変わってしまったけど、水の色は変わっていない」と話されました。
また劇中に出てくる焼酎『極楽』について「実際にある球磨の焼酎で、度数35度以上のものがオススメ」と教えてくれました。

音楽を担当された志娥慶香さん。熊本在住で、遠山監督のすべての作品に参加されています。「熊本で同じ雨を体験したが、私の体験を音楽に込めることはせず、監督と擦り合わせながら音楽を制作した。劇中の台詞にもあった”浮かぶものと沈むもの”を意識した」と振り返りました。

お客様との質疑応答では、「熊本の映画ということで、方言は気にしたのか」「瑞波のお相手はどうなったのか」などの質問が挙がり、「今年観た日本映画で一番良かった。山崎皓司さんの自然な演技と、セリフが少ない中での志娥さんの音楽が印象的だった」という感想の声も聞かれました。

淡いような幻想的な色遣いについての質問が挙がり、遠山監督は「撮影監督とは”美しさを求めないで、目の前の状況を的確に撮ること”を話し合って決めた。そのままだと生々しくなってしまうので、カラーグレーディングで、タイトルにある”夢”のフィルターを1枚入れたような色彩に調整した」と解説しました。

将来映画監督を目指している高校生から「信頼できる映画監督とは?」という質問が挙がり、一人ひとりにお答えいただきました。
玉置さんは「対話ができる監督。そして色々な経験をして広い視野があり、引き出しが多い監督」
山崎さんは「作品に責任を持つこと。俳優は、出来上がるまでどういう風に撮られているか分からないし手出しができなくなるので、監督には責任をもって取り組んでもらいたい」
加藤さんは「俳優には楽しく演じさせてくれる、スタッフには楽しく仕事させてくれる、そして任せてくれる監督」
志娥さんは「映画に関して何を聞かれても、明確な理由をもって的確に答えられる監督は信用できると思う」と、ご回答いただきました。

遠山監督は「何事にも誠実に向き合う。スタッフにも、土地にも向き合う。何をスタッフに食べさせるか、そういうことも全て大事にしている」と話され、最後に映画監督志望の子へ「撮りたいものがあるなら、助監督はやらなくていい。助監督のプロになってしまう。描きたいもの、守りたいものがあるのなら、最初から監督をやっていこう」とアドバイスを送りました。

舞台挨拶後、パンフレットご購入の方にサインをいただきました。

『あの子の夢を水に流して』は12/14(木)までの上映です。
遠山昇司監督、玉置玲央さん、山崎皓司さん、加藤笑平さん、志娥慶香さん、そしてご来場のお客様、ご参加いただき誠にありがとうございました。

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