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2024.01.21(日)

イベント

『アアルト』トークイベントレポート!!

平素よりシアターエンヤをご愛顧いただき誠にありがとうございます。

1月21日(日)に実施しました『アアルト』トークショーのレポートです!
シアターエンヤ館長の甲斐田のMCのもと、ゲストとして、神保慶政さん(映画監督/福岡建築ファウンデーション ≪FAF:https://www.fafnpo.jp/≫活動会員)、伊南宗一さん(建築家/福岡建築ファウンデーション活動会員)、前田崇治さん(紙漉職人「紙漉思考室」)にご登壇いただき、『アアルト』を掘り下げるトークイベントを開催しました。

▼『アアルト』作品紹介
フィンランドを代表する建築家・デザイナー、アルヴァ・アアルト(1898-1976年)。不朽の名作として名高い「スツール60」、アイコン的アイテムと言える「アアルトベース」、そして自然との調和が見事な「ルイ・カレ邸」など、優れたデザインと数々の名建築を生み出した。そんなアルヴァ・アアルトのデザイナーとしての人生を突き動かしたのは、一人の女性だった――。「幼い頃、アアルトが設計した図書館で過ごし、彼の建築の虜になった」と語るフィンランドの新鋭ヴィルピ・スータリが、アルヴァの最初の妻、アイノとの手紙のやりとり、同世代を生きた建築家や友人たちの証言などを盛り込みながら、アアルトの知られざる素顔を躍動感溢れるタッチで描き出す。主張しすぎない。けれど、側に置くだけで心が豊かになり、日常が彩られる。人と環境に優しいデザインで、現代の生活にも溶け込む逸品はどのようにして生まれたのか。2023年は、アルヴァ・アアルトの生誕125周年にあたる。アルテックの家具やイッタラのアイテムなど、後世に残る名作の誕生秘話も必見!
作品WEBサイト:https://aaltofilm.com/

今回のイベントは、映画監督で福岡建築ファウンデーション会員の神保慶政さんよりご提案いただきました。
イベントのきっかけは、「福岡建築ファウンデーション会員の皆で建築に関する映画を観たら、建築家目線で映画を語れて楽しいだろう」と思ったこと。
第1回は、昨年2023年3月にシアターエンヤで映画『コペンハーゲンに山を』でトークショーを開催。福岡のKBCシネマ・熊本のDenkikanでもトークイベントを行い、今回で4回目になります。
◎『コペンハーゲンに山を』イベントレポートはコチラ

今回のトークテーマは、「触覚」と「建築」。
建築だけではなく家具・食器も手がけたアルヴァ・アアルト。そのキャリアをひもとくと、「触覚」というテーマが浮かび上がります。映画の中でも約90年前にできたヴィボルグ図書館の木の手すりを子どもたちが触るシーンが印象的に描かれていますが、機能性やデザインだけではなく、「触れる」対象として建築を考えることは、コミュニケーション、つくること、使うことなど、「触れる」という行為の本質をみつめ直すきっかけともなります。それは、「風土から貰い物をして創作する」という唐津の伝統文化の特質に触れながら、手仕事の伝統文化と建築の親和性にも繋がります。

神保さんは「触覚」について、「手で触れられるものだけが触覚ではないと思う。例えば唐津駅に降りたら唐津の空気を感じたり、建物内の壁面の違う空間に入って音の違いを感じたり、目に見えない・触れないでも感じる触覚というのものがある」と語られました。

唐津は江戸時代、和紙産業が盛んでした。唐津くんちの曳山にも和紙が使用されています。紙漉思考室の前田さんは、紙をつくるだけでなく、建築やインテリアとコラボレーションして新たな価値を創造しています。前田さんに、映画を観た感想をお聞きしました。
「アアルトは、実際に作業する職人さんときちんと向き合って仕事をしていると感じて、そこが嬉しく感じた。私も建築家と仕事をする機会があり、最初は建築家に無理難題を言われているように感じるが、話を重ねて建築家の意図が分かってくると、非常にやりがいが出る。アアルトと仕事をしていた職人も、自信とやりがいをもって仕事をしていたのではないか」と、ご自身の経験と重ねて感想を述べられました。

イギリスで生活されていたことがある伊南さんに、ヨーロッパでのアアルトの評価についてお聞きしました。
「映画の中ではアアルトの晩年が寂しく描かれていたが、フィンランドの紙幣にアアルトの肖像が描かれている。それは正に評価されている証拠だと思う。アアルトは当初は合理主義・機能主義のモダニズム建築の精神を継承していたが、だんだんモダニズム建築から外れて、その土地に合った、人間中心の建築を目指していった。モダニズム建築は工業生産(ガラス・コンクリート・鉄)を使うが、アアルトはフィンランドでローカルな素材である木材を使用している。建築の新しい技術や考え方を身につけたうえで、土着的な素材に落とし込んでいる。木をワンランクアップさせる素材の扱い方が評価されたんだと、映画を観て改めて感じた。」とお答えいただきました。

お客様からは「この映画を観て、”理想”と”現実”ということを考えさせられた」との声が挙がりました。
伊南さんは「出来る・出来ないの現実問題や、予算の問題は、建築の世界では誰にでも起こる。求められているものと現実問題の中で最適解を見つけていく努力をする。それが建築家の工夫であり、それを越えて出来た建築が評価されていく。カッコいいものを作るだけではない、建築家の凄いところだと思う」と語られました。

甲斐田館長は「建築に知識がない人が見ても、アアルトの建築は親近感を感じると思う。それは唐津の人から見れば、唐津出身の建築家・辰野金吾の特徴でもあるレンガをアアルトも使っていることで感じるし、アアルトの”人間は自然の一部”という考えの上での『人間中心主義』が日本の文化と合っている気がする」と語られました。
また映画については「映画は総合芸術と言われるが、アアルトの建築も、建物そのものと建物が織りなす空間を演出するためのインテリアを含めた総合芸術であると感じた。映画という総合芸術と、建築という総合芸術がクロスして感じられる映像作品だった」と振り返りました。

福岡建築ファウンデーション(FAF)は、市民の方に福岡の建築を楽しんでもらう企画を行うNPO法人です。ご興味がございましたら是非アクセスしてください。
福岡建築ファウンデーションWEBサイト:https://www.fafnpo.jp/

前田崇治さん「紙漉思考室」の作品はWEBでご覧いただけます。シアターエンヤ隣のKARAE SHOPで販売もしています。
こちらも是非チェックしてみてください。
紙漉思考室:http://shikoushitsu.jp/

映画『アアルト』はシアターエンヤでは1/25(木)までの上映です。
神保慶政さん・伊南宗一さん・前田崇治さん、そしてご来場のお客様、ご参加いただき誠にありがとうございました。

【THEATER ENYA事務局】
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